ほのぼの子育て日記

子育て日記中心、時々怪談

お盆怪談「入ってきたものは」

 f:id:budorigo:20230814163424j:image

 お盆真っ盛りですね
 前回は怪談を投稿しましたが、時期が時期なので今回も怪談を投稿します。ほのぼの子育てとは程遠い内容となってしまいますが、悪しからず。。。
 とはいっても、自分が体験した怖い話は前回までで終了(霊感も無いもので、すみません…)で、今回からは友人から聞いた話を投稿します。
 友人のK(男性)が子どもの頃経験したお盆にまつわるお話です。2本仕入れておりますので、本日1本目、明日2本目をお届けします。どうか涼んでいってください。それでは、参ります。


1本目「入ってきたものは」


 Kが小学生だった頃のお話。その日は8月13日の迎え盆で、お墓参りへ行く日でした。ただ、炎天下で暑かったのとゲームが楽しかったのとで、Kは家族とはお墓参りへ行かず、1階の居間でゲームをしていました。Kの他にも、居間から近い玄関で、祖母が畑から採ってきた野菜の選別をしており、その関係もあって玄関の戸は開け放たれていました。
 Kの家の構造ですが、建物は2階建てで、玄関から真っすぐのびる廊下の先に階段があり、階段の上はK、兄、そして姉の部屋がそれぞれあります。Kがゲームをしている居間のちょうど真上がKの自室でした。


 家族がお墓参りに出かけて10分ほど経った頃、誰かが玄関からドタドタと走って入ってくる足音が聞こえてきました。からして子ども1人のようなので、兄か姉でしょうか。居間と廊下を仕切る襖は閉められていたので姿は見えませんでしたが、足音はドタドタと居間の前を通り過ぎ、階段を駆け上がって2階に行ったようです。

 兄か姉が忘れ物でもしたのかな、と思いながらゲームを続けていると、足音が居間の真上、つまりKの部屋から聞こえるようになりました。ゲームを一時停止し、妙に思って聞いてると、足音はKの部屋を走り回っています。


「なんだよ、勝手に他人の部屋に入って。からかってるのかよ」そう思ったKは、文句を言いに行ってやろうと、ゲームのコントローラーを置き立ち上がりかけたその瞬間、


ドンドンドンッッッッ!!!!!!!!!


先ほどまでは子どもと思われるような軽い足音だったのですが、急に音が大きくなったのです。まるで大の大人が思いっきりジャンプをしているような衝撃でした。Kが驚いて身動きできずにいるうちにも音はどんどんと激しくなり、ついには家が軽く揺れるくらいになりました。柱もミシミシと音を立て、居間の壁に掛けてあった賞状も落下しました。


「これは兄でも姉でもない、ヤバいやつだ」直観的にそう感じたKは、玄関にいる祖母のもとへ逃げようと思いましたが、恐怖と驚きとで足が動きません。そうこうしているうちに、音はしだいに小さくなり、元の子ども並みの足音に戻ってドタドタとKの部屋を出て、階段を降りていきました。そして、Kのいる居間の前も音が通り過ぎ、そのまま玄関から出て行ったようです。


 緊張から解放されほっとすると同時に、すぐにKは襖を開け、玄関にいる祖母の元へ駆け寄りました。祖母は何事もなかったかのように野菜の選別をしています。
「おばあちゃん!今ここ誰か通らなかった?」Kが尋ねると、祖母はきょとんとした顔をしました。
「いーや、誰も通らねよ」
「うそだ!だって、走って入ってきて、2階でたくさんジャンプして、それでまた走って出て行ったじゃん!おばあちゃんも音聞いたでしょ?」
「そんな音聞かんかったなあ。気のせいでねえか?」


Kは愕然としました。あれほど大きな音であれば気付かないはずはありませんし、祖母は玄関にいたので、音的には祖母の真横を走っていったはずです。祖母だって年齢の割には耳の良い方だったので、あの音だって十分聞こえるはず…。もしかして自分をからかっているのか?とも思いましたが、祖母の様子からしてそういった印象は感じ取れませんでした。
 そうなると、もしかしたら祖母の言う通り、自分の気のせいだったのだろうか?自分が今経験したことに半信半疑になりながらも居間に戻ると、床には先ほどの振動で落ちた賞状。
「やっぱり気のせいなんかじゃなかったんだ!」そう思ってKは賞状を拾い上げました。それは、今は亡き祖父が剣道の大会で準優勝した時の賞状でした。祖父は、剣道の名手で、Kがまだ小さい頃よく庭で剣道の素振りをしていました。Kが保育園にいた頃には、よく刀の形のおもちゃを買ってくれたのですが、小学校に上がる頃亡くなってしまったのです。


「もしかしたらおじいちゃんがお墓参りに来いって言ってるのかな?」子ども心ながらにそんなことを考えたKは、急いで家を飛び出し、"ドタドタと"走ってお墓参りへと向かったのでした。


1本目 完